着エロに通ずるマッコール・アクションの"余白"『イコライザー』
19秒で世の中の悪を完全抹消する。
どうも、ヤマモトです。
今回は『イコライザー2』が絶賛公開中ということで、デンゼル版マッコールが産声を上げた前作『イコライザー(原題:The Equalizer)』の感想を綴ります。
【ストーリー】
昼はホームセンターで働くロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)。眠れない時のお決まりは近くにある24時間営業のダイナーで読書をすること。ダイナーに通う内、マッコールは同じくダイナーの常連であるコールガール、テリーことアリーナ(クロエ・グレース・モレッツ)と親交を深めていく。ある日、客からクレームが入ったことをきっかけに彼女は雇われている組織に病院送りにされ昏睡状態に陥ってしまう。事情を知ったマッコールはCIA在籍時代に培った殺人術を解禁し、組織の人間を抹殺することに成功する。そして以後も、弱者の味方となり世の中に蔓延る不正を正していくが、組織の人間を殺されたロシアン・マフィアが報復のためマッコールを追い詰める...
【イコってイコってイコりまくる】
今回は僕が死ぬほど好きな「ナメてた相手が実は殺人マシーンでした(※映画ライターのギンティ小林さん命名)」系の傑作『イコライザー』について少々お話させていただきます。
まず「ナメてた相手が実は殺人マシーンでした」系の映画とは、読んで字のごとく「大したことないと思っていたら実はめちゃくちゃ強い奴」が出てくる映画のことを指し、敵との戦力差が圧倒的な場合が多い為、ある意味ホラー映画に近い恐怖を敵目線で感じてしまうのが特徴です。
例を挙げると、誘拐した娘のパパが実は元CIA工作員だった『96時間』やただの愛犬家兼クラシックカーオタクだと思っていた男が伝説の殺し屋だった『ジョン・ウィック』などでしょうか。
今後、公開が控えている作品としては、ブルース・ウィルス主演の『デス・ウィッシュ』や狂気のニコラス・ケイジが話題の『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』などが該当するかと思います。
マンディに関しては、数年後の引退に向けどこまで振り切っていくのかが楽しみになる表情をニコラス・ケイジがこれみよがしに魅せているので、皆さんも心して公開を待ちましょう。
さて、前置きが長くなりましたが、そんな「ナメてた相手が実は殺人マシーンでした」の中でも群を抜いて僕が好きな作品が『イコライザー』。
ようやく今週末、続編を観に行ける算段がついたので、改めて本作品を観直したのですが、デンゼルの魂が抜けたような無表情とおしおき(殺人・暴行・脅迫)の数々に再び胸が熱くなったため、こうやってブログにしたためている次第でございます。
基本的に本作品は、「困った人がいる→困らせている人に会いに行く→殺める(もしくは暴行と脅迫)」という至ってシンプルな構成に沿って話が展開されるため、あまり難しいことを考えずに鑑賞できる全世代に向けて優しい殺人ムービーになります。
本作品のある種の見所として、ところどころ殺害の過程を見せないことが挙げられ、ついにはそのようなアクションシーンを「イコる」などと表現する造語までできています。
この前に床山氏がイコライザーのデンゼル・ワシントンが敵と対峙した次の瞬間敵が死んでる事後アクションのことを「イコる」と言い、普通のアクション映画で主役が敵と対峙して普通に闘って倒すのを「逆イコり」と言ってて、イコライザーが映画界に与えた衝撃の大きさを改めて感じた。
— 人間食べ食べカエル (@TABECHAUYO) 2015年6月15日
では、具合的に「イコる」とはどういうことか。
今回は、「マッコールが働くホームセンターに強盗が押し掛けてきた時のシーン」と「組織のトップ格にマッコールが警告しに現れるシーン」の二つを例に説明させていただきます。
▶①ホームセンターに現れた強盗をイコる
まずは強盗が登場
犯人の特徴を頭に叩き込み
同僚が怯えているのと多くの客がいるため、一旦逃がす
店のハンマーを手に取り...
ハンマーを元の位置に戻す。
これで終わりです。
この「ハンマーを手に取るシーン」と「ハンマーを元の位置に戻すシーン」の間において、一切の暴力シーンは挟まれていません。これがいわゆる「イコる」という名のアクションです。
「起承転結」の「起と結」だけを見せることによって、観客の想像力を掻き立て「承と転」を補完させるため、もはや一種の知育映画と言っても差し支えないのではないでしょうか。
▶②イキった部下をイコる
消息を絶ったマッコールを見つけてやると意気込む部下が
トイレに行き
イコられる
イコられる
もうここまで来ると完全にホラーの領域ですが「バッキバキに割れた血まみれのサングラスを置く」という所作だけで悲惨な最期が容易に想像できるご機嫌なシーンになります。
このように観客側が物語の一部を想像できる余白を残しているのは、本作をより楽しめる仕掛けとして効果的な役割を果たしているのではないでしょうか。
僕はこのイコりアクションについて、布や手で隠している向こう側を想像することができる着エロやグラビアに通ずるものがあるなと思ったんです。
AVのように全てが見える状態ももちろん興奮しますが、身体の一部が隠れている方が布や腕、泡のその先に無限の可能性とシャングリラを感じることができて、もっと興奮すると思うし、この話は一体どこに着地すればいいのでしょうか。
自分でも落としどころがわからなくなってきたので、とにかく皆さんも『イコライザー』と現在劇場公開中の『イコライザー2』を必ず観ましょう。
僕は今から着エロでシコリアクションして寝ます。
fin.
【総合評価】
★★★★☆
Twitterやってます。不定期に生産性の無いことを呟きます。
前回のブログ