ヤマモトのブログ

日暮らし硯に向かひて書くとみせかけ、結構な頻度でサボります。

冷たくなった人間は壁に収納するのがメキシコスタイル『ボーダーライン』

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その善悪に境界 ボーダーはあるのか

 

 

どうも、ヤマモトです。

今回はデルトロ先生がメキシコの麻薬カルテルを超法規的(もはや違法)なやり方で粛清する『ボーダーライン(原題:Sicario)』の感想を綴ります。

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【あらすじ】

アリゾナ州チャンドラー。FBI捜査官のケイト・メイサ― (エミリー・ブラント)と彼女のチームは誘拐事件の容疑者宅に踏み込み、そこで壁に埋まった多くの死体を発見する。その後、ケイトは上司の推薦により国防総省のマット・グレイヴァ―(ジョシュ・ブローリン)が指揮するチームへ加わり、誘拐事件の主犯である麻薬カルテルのトップ、マニュエル・ディアスを追うこととなる。その後、マットの仲間である所属不明のコロンビア人、アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)が合流し、捜査を進めていくが、彼らの強引かつ超法規的な作戦に対し、ケイトは不信感を強めていく…

 

【それでもメキシコ行ってみたいよね】

来る11月16日、全国民待望の『ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ(原題:Sicario: Day of the Soldado)』が日本公開となるため、今回は最新作公開に先駆けて一作目である『ボーダーライン』を紹介させていただきます。

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もしかしたらメキシコへの渡航意欲が失せる可能性がありますが、基本的に一般の旅行者が拉致られたり、マチェーテで拷問されることはたぶん無いと思いますので、安心してナチョスを食べてに行っていただければ幸いです。

 

ただ、「デッケェとんがり帽子(ソンブレロ)を被ったヒゲ面のおっさんが毎日マラカス振りながら陽気にタコスを食べている」というステレオタイプなメキシコ像を崩したくない方はそのイメージを抱いたまま『ナチョ・リブレ』あたりを鑑賞することをおすすめします。そんなおっさんが登場したかは覚えてませんが。

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さて、『ボーダーライン』を鑑賞するにあたり、僕らがなんとなく持っている陽気なメキシコ像の裏には、これまでに多くの尊い命を奪ってきた「麻薬戦争」という惨憺たる闇が蔓延っていることを知る必要があるのではないでしょうか。(知らなくても十分楽しめるけど。)

 

カルテル、警察や軍隊、彼らの家族、組織に立てついたと見なされる裁判官や政治家など、少しでも首を突っ込んだ瞬間に文字通り肉塊と化してしまう世にも恐ろしいメキシコ麻薬戦争。

 

有名なニュースを一例に挙げると、2016年にメキシコの南方にあるテミスコ市で「組織犯罪撲滅」を掲げ市長に就任したギセラ・モタ氏が就任翌日に麻薬カルテルによって惨殺されるという地獄みたいな事件があります。

 

もちろん粛清の対象は政治家などだけでなく、敵対している組織の人間も同様で、少しでもちょっかいをかけられたら、相手側のメンバーや家族を拉致したうえ、銃殺したり、マチェーテで全身を切断したりと同じ人間とは思えない所業を平気で実行してしまいます。(※「ロスセタス」などでググれば動画は観れますが、完全におすすめできません。)

 

なお、このメキシコ麻薬戦争では、軍隊や警察がカルテル側に高給でリクルートされ寝返るという一面もあり、本作でもそれが描かれています。まさに善悪のボーダーがぶっ壊れている状態。

 

また、カルテルの残虐性を表す描写として、謎のコロンビア人であるアレハンドロは過去に組織から妻の首を切断され、娘を酸に投げ込まれるというハードコアすぎるバックボーンを抱えています。そりゃ、復讐鬼にもなるわ。

 

上述のとおり『ボーダーライン』はそんな麻薬戦争のリアルを誇張表現無しに描いており、緊迫感溢れる銃撃戦、麻薬戦争の渦中に巻き込まれたケイトの心理描写、アレハンドロ無双などエンタメとしてとても優れている作品だと個人的に思います。(難しい話は抜きにして脊髄反射的に面白い。)

 

ただ、原題である『Sicario(※メキシコで”暗殺者”を意味する)』を映画冒頭で説明しているにもかかわらず、何故か『ボーダーライン』と何とも言えない邦題をつけているのは、マーケティング的な大人の事情があったのでしょうか。そこだけ少し残念でした。

 

同じく本作が好きな友人に至っては、「邦題のせいで劇場に行かなかったと言っても過言ではない」と映画レビューサイトで述べていたのですが、さすがにそれは過言だろと思いました。

 

邦題はアレですが、デルトロ先生を筆頭に登場人物全員カッコいいので、お時間ある方はぜひご鑑賞ください。

 

fin.

 

【総合評価】

★★★★☆

 

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